大豆のイソフラボンが女性ホルモンに似た作用を持つということはよく知られています。
では子宮筋腫を患っている人は、大豆のイソフラボン(植物エストロゲン)は摂らないほうがいいのでしょうか。それとも量に気をつけて摂ったほうがいいのでしょうか。
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イソフラボンの摂取量の目安は一日75mg
内閣府の食品安全委員会の「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」という資料によると、大豆イソフラボンアグリコンの摂取量は一日70から75mgを上限とする、となっています。
関連リンク:食品安全委員会「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」、農林水産省「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」
※大豆イソフラボンアグリコンとは、イソフラボンを摂取してから腸内細菌の働きなどで糖部分が分離したもの。簡単に言えばおなかの中でイソフラボンがより吸収されやすいかたちに変化したもの。この数値に換算したほうが、実際の体への影響を計ることができるとされています。
※換算する計算式は、大豆イソフラボン配糖体のmg量に0.625をかける=大豆イソフラボンアグリコンのmg量。
お味噌汁など日常の食事に含まれるイソフラボン量は?
日本人の伝統的な日常の食事として大豆製品は多いですよね。お味噌汁、納豆、お豆腐や揚げ、お醤油なども大豆が原料ですし。
しかしこれについては全く何の問題もないとはっきり記載されていました。こうした日常の食事からの大豆イソフラボンアグリコンの量は、平均的には一日15から22mg程度だそうです。思ったよりも少ないですね。時々多めに摂ることがあると考えて40から45mg。
たんぱく質などイソフラボン以外の栄養価が高い食品たちですから、大豆製品の食べすぎを気にするよりはむしろ積極的に毎日食べるようにしたほうが良いみたいです。現代人は大豆メニューを食べる機会がかなり減っているよう。
気になるようなら、自分が食べている大豆食品のグラムを計ってみてください。意外とそれほど量を食べていないことに気づくはずです。
サプリメントなどでさらに追加摂取を考える場合には、30mgを上限としたほうがよい
日常的な食事の中で摂る大豆食品は気にしなくて良いということがわかりました。
でもさらにサプリメントなどでイソフラボンを補給しようと思う場合には、上限の目安が決まっています。
それは一日30mg。(特定保健用食品として摂取するイソフラボンアグリコン)
サプリメントのパッケージにある含有量をよくチェックしてみましょう。
更年期障害の改善や乳がん予防、バストアップなどの目的で、大豆イソフラボンのサプリを摂ろうとする人は多いようです。
しかし、サプリメントで過剰摂取にならないようには注意する必要がありますね。
結局、一日に食べてよい大豆製品の量はどれくらい?
では、イソフラボンアグリコンの一日の上限量75mgとは食品にするとどれくらいになるかというと・・・
実は、原料の大豆そのものによっても違いますし、加工方法などによっても変わってくるので簡単には換算できません。
・・・と言ってしまうと何の目安にもならないので、同じく食品安全委員会のページに載せられていた情報を調べてみますと、
- 煮大豆100g =イソフラボンアグリコン72.1mg
- 豆腐100g =20.3
- 凍み豆腐100g =88.5
- おから100g =10.5
- 納豆100g =73.5
(いずれもあくまでこの検査で用いた食品の平均値)だそうです。
ちなみに私がよく買う有機大豆の豆乳のパッケージには、「200mlでイソフラボン60mg」という表記がありました。アグリゴンに換算すると37.5mgです。これを考えると豆乳を一日2杯飲むとぴったり75mgアグリゴンですね。
また、豆腐1丁(平均300g)を1人で食べたらアグリコン約60mgですから、2丁食べたら駄目ですね。湯豆腐のときなどお豆腐好きのかたは注意?!そんなに食べないか。
しかしもし大豆イソフラボンを摂りすぎてしまった場合はどうなるのでしょうか?
食品安全委員会が参考にした調査実験によると、日常の食生活に上乗せして過剰に摂取したときに月経周期の延長が見られたそうです(上乗せ分57.3mg以上)。つまり、イソフラボンの摂りすぎは生理のサイクルを乱してしまうということがわかりました。さらに一日150mgのアグリコンを5年間摂取したことで子宮内膜の増殖が見られたという実験結果もあります。これは子宮筋腫持ちとしてはあまり望ましくないことですね。
とはいっても一日75mgのイソフラボンアグリコンが上限というのは、かなりの安全余裕を見た数値です。しかも
この量を毎日欠かさず長期間摂取する場合の平均値としての上限値
であり、
大豆食品からの摂取量がこの数値を超えたからといって直ちに健康被害に結びつくものではない
と明言されています。
ですから時々うっかり豆乳デザートを食べ過ぎてしまうとか、お豆腐フルコースの料亭で美味しくいただいたとか、そういうケースはほとんど問題になりません。
毎日毎日、豆乳がぶ飲みしていない限り、体への悪影響はないと言っていいでしょう。
ほっ。安心しました。
大豆イソフラボンの摂取量上限については反論もある
食品安全委員会で上記の内容の発表が行われたのは、2006年です。当時トクホの表記は「イソフラボン」だったのに「イソフラボンアグリコン」の数値で上限を決めて発表したため、いろいろな誤解が生まれて「大豆の摂取は危険だ」という風評にまで発展してしまったそう。
ですが、この上限を決める際の根拠として用いられたのが、大豆食習慣の少ない国(イタリア)の博士が書いた論文であったことや、実験結果が悪性のものであったかの証明ができていないなど疑問点もいくつかあるため、医学的な見地からの反論が日本の医師や研究者から寄せられているということです。(フジッコのイソフラボン詳細ページより)
つまり大豆イソフラボンが人体に与える影響についてはまだまだ研究段階ですし、過剰摂取による健康被害も明確な実例があるとは言えないようですね。
子宮筋腫対策としては大豆を適度に摂るべき
むしろ大豆イソフラボンの適度な摂取は、ホルモンバランスの乱れを整えてくれます。これは子宮筋腫対策にも必要なことです。
イソフラボンは「植物性エストロゲン」の一種です。植物性のエストロゲンはイソフラボンのほかにもあるって知っていましたか?
植物性エストロゲンを適度に摂ることが必要なのはなぜか、「植物性エストロゲンが子宮筋腫にいいのはなぜ?」の記事もどうぞ。